天然アスタキサンチン   天然アスタキサンチン
アスタキサンチンの化学

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基礎物性

化学構造・合成
1938年R. Kuhnら 1) は、ロブスター(Astacus gammarus L.)から新しい色素を分離しアスタキサンチンと名付けたのが化学にアスタキサンチンが登場した最初である。彼らはアスタキサンチンおよび同エステル体が存在することを見出しその推定構造を提出した。それ以来、アスタキサンチンが自然界に広く分布し、通常アスタキサンチン脂肪酸エステル体として存在すること、甲殻類などでたんぱく質と結合したアスタキサンチン蛋白(オボルビン、クラスタシアニン) 2) としても存在することが明らかになってきた。
化学構造は、 3,3’-dihydroxy-β,β-carotene-4,4’-dione (C40H5204,分子量596.82)で下図に示す。476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大 3) を持つ赤色の色素でカロテノイドの一種キサントフィルに属する。

アスタキサンチン :Astaxanthin

 CAS 登録番号: [472-61-7]
 CAS 名: 3,3’-dihydroxy-β,β-carotene-4,4’-dione (3,3’-dihydroxy-4,4’-diketo-β-carotene)
 分子式:C40H52O4 分子量:596.82


アスタキサンチンは、分子の両端に存在する環構造の3(3’)-位の水酸基の立体配置により異性体が存在する3S,3S’-体、3S,3R’-体(meso-体)、3R,3R’-体の三種で、さらに分子中央の共役二重結合のcis-、trans-の異性体も存在する。例えば全cis-、9-cis体と13-cis体などの如くである。
3,3’-位の水酸基は脂肪酸とエステルを形成することができる。オキアミから得られるアスタキサンチンは、脂肪酸二個結合したジエステル体 4) 、H. pluvialisから得られるものは3S,3S’-体で、脂肪酸一個結合したモノエステル体が多く含まれている 5) 、Phaffia Rhodozymaより得られるアスタキサンチンは、3R,3R’-体 6)で通常天然に見出される3S,3S’-体と反対の構造を持っている。脂肪酸とエステル形成していないフリー体で存在している 7)
J.D. Surmatisら(1967) 8)により、アスタキサンチンジメチルエステルの形で初めて全合成がなされた。β-ヨノン(I)から4-メトキシ-β-ヨノン(VI)を経てメトキシC19-アルデヒド(IX)を合成。(IX)2分子の縮合を経てアスタキサンチン(XV)を合成(Chart I、II、III)(文献7より許可を得て引用)。

 



光学活性なアスタキサンチン、(3S,3′S)-アスタキサンチン、その他の異性体の合成はF.von Kienzleら(1978) 9)によりなされた。自然界に存在する時エステ体をなしている場合が多いが、そのモノエステル・ジエステル体をP. fluorescensのコレステロルエステラーゼエステル分解し 10) 、遊離のアスタキンチンを得ることが出来、総アスタキサンチンを測定する場合に応用されている。フッ素化アスタキサンチン 11) 、水溶性を高めるためサクシニル-メソ-アスタキサアンチン 12)などが合成されている。
深海性赤エビlangostilla (Pleuroncodes planipes; Decapoda, Anomura)由来のアスタキサンチンのエステル脂肪酸の組成とRS異性体が分析されている 13) 。総カロテノイド中ジエステル体が70%、モノエステル体が12%、フリー体が10%、その他のカロテノイドなど8%であった。TLCで3個のジエステル体(量比 5:4:1)と1個のモノエステル体が分離された。疎抽出物に比べジエステル体では飽和脂肪酸(C16:0 とC18:1n-9)が増え、モノエステル体では減少していた。モノエステル体は、総脂肪酸の約70%が不飽和でC20:5n-3とC22:6n-3が多かった。総ジエステル体での(3R,3'R)-:(3R,3'S)-:(3S,3'S)-アスタキサンチンの比は3:1:3であった。モノエステル体とフリー体にては4:1:4であった。



安全性
アスタキサンチンの化学的安定性について、アスタキサンチンはカンタキサンチンより光退色に対してより抵抗性を有し、光退色は波長に依存していた 1)。溶媒の種類にあまり依存性なく、溶媒の酸素溶解性とも関連少なかった。濃度依存性も少ない。有機溶媒中でのアスタキサンチンの異性化の速さは、ジクロロメタン>クロロフォルム>ジクロロメタン:メタノール(25:75)>メタノール>アセトニトリル>アセトン>DMSOの順であった。9-cis体と13-cis体の割合は溶媒によって異なるが13-cis体が主であった 2)。アスタキサンチンのエステル体をメタノール中で0.018M NaOHを用いて6時間22℃の暗所でけん化加水分解反応処理したが、アスタキサンチンそのもの分解は見られなかった 3) 。trans-アスタキサンチンに異性化を知るために各種の有機溶媒に溶かし、35℃に加熱後cis型とtrans型の量をHPLCで分析した。異性化率は溶媒によって異なり、溶媒によって9-cis型と13-cis型の比率も異なっていた。すべての溶媒で13-cis型が主要な異性体であった。ジクロロメタンに溶解したtrans-型は容易にcis-型に異性化された 4) 。β-カロテン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、アスタキサンチンについて、三フッソ化酢酸の酸性下で酸濃度とカロテノイド構造間の関連を検討したところ5)、酸とカロテノイドの反応は赤色領域と近赤外領域(NIR)スペクトルで変動が見られた。ESRによるとNIR吸収変動はカロテノイドラジカルカチオンの吸収変動と似ているにもかかわらずカロテノイドラジカルのものではなかった。カロテノイドの消滅は偽一次反応(反応次数は>1)に従っていた。長寿命の中間体はモノ-(700nm)とジ-(約950nm)プロトン化したカロテノイドと示唆された。酸はプロトン化中間体を経由するcis/trans-異性化を起こすが、多分、カロテノイドエステルの短い共役系の非ラジカル種への崩壊によるものであろう。メチン炭素の低速のプロトン化がこの崩壊の第一段階であるが、NIR吸収バンドの赤方偏移が示すようにカロテノイドのチャージ−トランスファー複合体形成の結果、酸素が反応速度を上昇させる。アスタキサンチンやカンタキサンチンのようなカルボニル基を持つカロテノイドは、β-カロテンやゼアキサンチンよりこの崩壊速度が遅い。これはカルボニル基の非破壊的プロトン化が優先することを示している。


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