アスタキサンチンはこの数年、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界各国で著しく需要が増加しております。同様に日本においてもこの潮流は変わらず、マスコミ等でも数多く取上げられ話題を呼んでいます。アスタキサンチン工業会では、消費者の方がアスタキサンチンを正しく理解し信頼してご使用できるよう、ヘマトコッカス藻由来の安全・安心・高品質なアスタキサンチン製品をお届けするよう努めています。
アスタキサンチンの品質の維持向上のために、アスタキサンチン工業会では原料及び製剤の品質規格基準を以下の通り定めております。
この品質規格基準は、ヘマトコッカス藻のシスト細胞から得られる、主としてアスタキサンチンエステルを含有する抽出物またはその製剤であって、形状が油状、粉末状、粒状、顆粒状 又は乳化液状、等のものに適用する。
「ヘマトコッカス藻」とは、緑色植物門 緑藻綱 クラミドモナス目 ヘマトコッカス科 ヘマトコッカス属の淡水性単細胞藻 Haematococcus pluvialisであって、通常は20〜30ミクロン(μm)の卵形〜球形の単細胞で緑色ないし淡緑色を呈し、独立栄養増殖を行う。本項での「ヘマトコッカス藻」とは、細胞内にアスタキサンチンを主とするカロテノイドを高濃度に蓄積し、充分に成熟したシスト細胞をいう。
「ヘマトコッカス藻アスタキサンチン」とは「ヘマトコッカス藻」の全藻から得られた脂肪酸エステル体を主とするアスタキサンチン類を主成分とするものであり、第3項で規定する規格を満たすものをいう。
「ヘマトコッカス藻アスタキサンチン製剤」とは、「ヘマトコッカス藻アスタキサンチン」を各種食品への利用に適するように加工した油状、粉末状、粒状、顆粒状、又は乳化液状のものをいう。
(1) | 第8版食品添加物公定書に定められた「ヘマトコッカス藻色素」の規格(定義、色価、性状、確認試験)を満たすこと。 |
(2) | アスタキサンチン含有量 5% w/w 以上であること |
(3) | 乾燥減量または水分 1%以下 |
(4) | フェオフォルバイド 既存フェオフォルバイド 100mg/100g以下 |
(5) | ヒ素 As2O3として2ppm以下 |
(6) | 重金属 Pbとして20ppm以下 |
(7) | 鉛 Pbとして1ppm以下 |
(8) | カドミウム Cdとして1ppm以下 |
(9) | 水銀 Hgとして1ppm以下 |
(10) | 一般細菌数 3×103個/g以下 |
(11) | 大腸菌群 陰性 |
(12) | 真菌 3×102個/g以下 |
(1)、(2)および(3)はヘマトコッカス藻アスタキサンチンに限る。
定 義 | 本品は,ヘマトコッカス(Haematococcus spp.)の全藻から得られた,アスタキサンチン類を主成分とするものである。食用油脂を含むことがある。 |
色 価 | 本品の色価(E10% 1cm)は600以上で,その表示量の95〜115%を含む。 |
性 状 | 本品は,だいだい〜暗褐色の塊,ペースト又は液体で,わずかに特異なにおいがある。 |
(1) | 本品の表示量から,色価600に換算して0.4gに相当する量をとり,アセトン100mlに溶かした液は,だいだい黄〜赤だいだい色を呈する。 |
(2) | (1)の液0.1mlに,硫酸5mlを加えるとき,液の色は青緑〜暗青色に変わる。 |
(3) | 本品をアセトンに溶かした液は,波長460〜480nmに極大吸収部がある。 |
(4) | 本品の表示量から,色価600に換算して0.4gに相当する量をとり,アセトン10mlに溶かし,検液とする。検液5μlを量り,対照液を用いず,ヘキサン/アセトン混液(7:3)を展開溶媒として薄層クロマトグラフィーを行い,展開溶媒の先端が原線より約10cmの高さに上昇したとき展開をやめ,風乾するとき,Rf値が0.4〜0.6付近に赤だいだい色のスポットを認める。このスポットの色は5%亜硝酸ナトリウム溶液を噴霧し,次に0.5mol/L硫酸を噴霧するとき,直ちに脱色される。ただし,薄層板には,担体として薄層クロマトグラフィー用シリカゲルを110℃で1時間乾燥したものを使用する。 |
(1) | 重金属 Pbとして40μg/g以下(0.50g,第2法,比較液 鉛標準液2.0ml) |
(2) | 鉛 Pbとして8.0μg/g以下(1.25g,第1法) |
(3) | ヒ素 As2O3として4.0μg/g以下(0.50g,第3法,装置B) |
色価測定法 | 色価測定法により次の操作条件で試験を行う。 |
操作条件 | 測定溶媒 アセトン,測定波長 波長460〜480nmの極大吸収部 |
(1) | ヘマトコッカス藻は微生物による汚染及び保存不良による変質のない品質の良好なものであること。 |
(2) | 必要に応じ自主検査を行い、原料としての適否を確認したものであること。 |
(3) | 「ヘマトコッカス藻アスタキサンチン」に使用するヘマトコッカス藻は、「2 定義 (1) ヘマトコッカス藻」項に規定されたものであって、その他に由来するアスタキサンチン原料を用いてはならない。(注1) |
(4) | 「ヘマトコッカス藻アスタキサンチン製剤」に使用するヘマトコッカス藻アスタキサンチンは、「2 定義 (2) ヘマトコッカス藻アスタキサンチン」項に規定されたものであること。 |
(5) | その他の原材料 食品又は食品材料であること。ただし、食品衛生法上認められている添加物はこの限りではない。 |
* | 使用する原材料は、平成18年5月施行の「食品等に残留する農薬・動物用医薬品等のポジティブリスト制度」に適合した原材料であること。(注2) |
試験項目 | 試験法 |
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(1)確認試験 |
食品添加物公定書 一般試験法 色価測定法 食品添加物公定書 成分規格 ヘマトコッカス藻色素 確認試験(4) |
(2)アスタキサンチン含有量 | 別記1 アスタキサンチンの定量試験法(注3) |
(3)乾燥減量または水分 |
食品衛生検査指針 理化学編(2005) U 1. 1. 水分 又は 食品添加物公定書 一般試験法 乾燥減量試験法 又は 水分測定法(カールフィッシャー法) |
(4)フェオフォルバイド | 環食第九九号 別紙1 既存フェオフォルバイドの定量法 又は食品衛生検査指針 理化学編(2005) U 6. C. 2. (3) フェオフォルバイドaとその関連化合物 |
(5)ヒ素 |
食品衛生検査指針 理化学編(2005) U 6. A. 7. ヒ素 又は 食品添加物公定書 一般試験法 ヒ素試験法 |
(6)重金属 | 食品添加物公定書 一般試験法 重金属試験法 |
(7)鉛 | 食品添加物公定書 一般試験法 鉛試験法(原子吸光光度法) |
(8)カドミウム | 食品添加物公定書 一般試験法 原子吸光光度法 |
(9)水銀 | 食品添加物公定書 一般試験法 原子吸光光度法 |
(10)一般細菌数 | 食品衛生検査指針 微生物編(2004) U 2. 2. 1. (1)生菌数 |
(11)大腸菌群 | 食品衛生検査指針 微生物編(2004) U 2. 2. 2. 大腸菌群 |
(12)カビ及び酵母 | 食品衛生検査指針 微生物編(2004) U 第3章 真菌 |
ヘマトコッカス藻に由来するカロテノイドは、そのほとんどがアスタキサンチンであり、わずかにアスタキサンチン生合成の中間体や光合成補助色素であるルテインなどの他のカロテノイドが含まれる。また、アスタキサンチンの大部分はエステル化されており、しかもいくつかの幾何異性体として存在している。従来は、吸光度測定により求められる総カロテノイド量から、アスタキサンチン量を推定する方法が多用されていた。
本法は、正確なアスタキサンチン量を測定するため、コレステロールエステラーゼにより脱エステル化を行い、フリー体化した上で、HPLCにてアスタキサンチンの各幾何異性体や他のカロテノイド類を分離、定量評価するものである。
Cyanotech社(米)Technical Bulletin #20 「HPLC and spectrophotometric analysis of carotenoids from Haematococcus algae oleoresin」を参考にした。
1-1 アセトン | : | 試薬特級品を用いる。 |
1-2 n-ヘキサン | : | 試薬特級品を用いる。 |
1-3 石油エーテル | : | 試薬特級品を用いる。 |
1-4 塩酸 | : | 試薬特級品を用いる。 |
1-5 クロロホルム | : | 試薬特級品を用いる。 |
1-6 トリスアミノメタン | : | 試薬特級品を用いる。 |
1-7 硫酸ナトリウム十水和物 | : | 試薬特級品を用いる。 |
1-8 コレステロールエステラーゼ | : | 和光純薬工業且ミ製コレステロールエテラーゼ(Pseudomonas Fluorescens)又は同等品を用いる。 |
1-9 アスタキサンチン標準品(全トランス体) | : | 和光純薬工業且ミ製アスタキサンチン又は同等品を用いる。 |
2-1 分光光度計:可視部吸光光度計 |
2-2 恒温水槽 |
2-3 遠心分離機 |
2-4 液体クロマトグラフ:紫外可視吸光光度計 |
3-1 | 試液の調製 |
■0.05M トリス-塩酸緩衝液(pH7.0) トリスアミノメタン6.1 gに水約900 mLを加えて溶かす。塩酸でpH7.0に調整後、水を加えて1000 mLとする。 |
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■酵素溶液(3.4 ユニット/mL) コレステロールエステラーゼ170ユニットに0.05 Mトリス-塩酸緩衝液(pH7.0) 50 mLを加えて溶かす。 |
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■ヘキサン-アセトン混液(82:18 V/V)[高速液体クロマトグラフ移動相]の調整 ヘキサン820 mL及びアセトン180 mLを混合する。 |
3-2 | 標準溶液の調製 | |||||||||||||
アスタキサンチン標準品約3mgを量り、100mL容メスフラスコに入れ、ここにクロロホルム10mL を加え、超音波処理によって溶解する。ここにヘキサンを加えて 100mL に定容し標準原液とする。 標準原液5、10、15、20mLを、4mLのクロロホルムを入れた4つの100mLメスフラスコにそれぞれ取り、ヘキサンで定容する。これらはそれぞれ約1.5、3.0、4.5、6.0μg/mLとなり、これらを標準溶液とし、最大値(ほぼ470nm)で吸光度を測定して次式により濃度を求める。 |
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また別に標準原液5、10、15、20mLを4つの100mLメスフラスコにそれぞれ取り、溶離液組成と同じ82%ヘキサン、18%アセトンになるようにヘキサン、アセトンを加えて正確に100mLとし、これをHPLC用標準溶液とする。 |
3-3 | 試料溶液の調製 |
試料約40-50mgを正確に量り、100mL容メスフラスコに入れ、アセトンを加えて正確に100mLとする。この液を、極大波長(おおよそ471-477nm)で吸光度0.80-1.25の間となるようにアセトンで希釈する。この液3mLを正確に量り、10mL容遠沈管に入れ、0.05Mトリス-塩酸緩衝液(pH7.0)2mLを加える。37℃の恒温水槽中で2分間加温して平衡化した後、酵素溶液600μLを加え、5〜10分おきに静かに振とうしながら、37℃の恒温水槽中で45分間反応させる。 反応終了後、硫酸ナトリウム十水和物1.0g及び石油エーテル4mLを加えてボルテックスミキサーで30秒攪拌後、3500rpmで3分間遠心分離する。上層をきれいな10mL遠沈管に取り、残った下層に石油エーテル2-4mLを加え、同様の混合、遠心分離、上層の分取をもう1度繰り返す。石油エーテルを窒素気流下で留去し、ヘキサン-アセトン混液(82:18V/V)3mLを正確に加えて溶解し、試料溶液とする。 |
3-4 | 高速液体クロマトグラフ操作条件(例) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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3-5 | 計算 | ||||||||
各HPLC用標準溶液20μLを高速液体クロマトグラフに注入し、得られたピーク面積を用いて、次式に従って補正係数を乗じ、アスタキサンチンピーク面積P(total)を求める。吸光度から算出した濃度とP(total)から検量線を作成する。 | |||||||||
P(total) = P(trans) + 1.2P(9-cis) + 1.6P(13-cis)
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同様に、試料溶液20μLを高速液体クロマトグラフに注入し、得られたピーク面積からP(total)を求め、検量線から試料溶液のアスタキサンチン濃度(μg/mL)を算出する。 |
注1: | その他に由来するアスタキサンチン原料とは、オキアミ、福寿草、酵母およびバクテリアなどに由来するもののほか、化学合成によって製造されたものを指す。 |
注2: | 平成15年の食品衛生法一部改正により第11条第3項の規定が新設され、残留農薬等に関するいわゆるポジティブリスト制度が導入された。この規定によって、農薬・飼料添加物及び動物用医薬品の成分である物質が人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が定める量を超えて残留する食品は、製造・輸入・加工・使用・調理・保存又は販売してはならないこととされた。その詳細は平成17年11月29日に告示(厚生労働省告示第497号、498号及び499号)、平成18年5月29日から施行となった。関連通知として「食品衛生法等の一部を改正する法律による改正後の食品衛生法第11条第3項の施行に伴う関係法令の整備について」(平成17年11月29日 食安発第1129001号 厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)、等がある。 |
注3: |
コレステロールエステラーゼを用いて、フリー体化したアスタキサンチンをHPLCにて分別定量する方法であり、長年に亘って定量試験に供されてきた実績があり、別記 1と同等とみなされる分析法(例えば、下記の試験法)を用いても良い。 Spectrophotometric and HPLC Analysis Method for Determining Astaxanthin Content in AstaREAL® http://www.fujichemical.co.jp/life_science/introduction/pdf/astareal_astaxanthin.pdf |
「ヘマトコッカス藻アスタキサンチン」アスタキサンチン工業会品質規格基準
作成日:2013年2月25日