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バイオ製造

Heamatococcus pluvialis
P. Bubrickは、1987年にMicrobio Resources Inc.がカリフォルニアで行なったH.pluvialisからのアスタキサンチン生産の商業化試験を概説している。この施設では、4種(2.6m2,34m2,500m2, 4500m2)のバイオリアクタを有し、スケールアップ時の培養および製剤化の問題点と対策を記載している。製造原価は20ドル/kg(アスタキサンチン1%含有製品)と試算している 4) 。S. Nagai らは、H.pluvialisのアスタキサンチン産生のための培養条件を検討し、光照射下で酢酸を基質として増殖が可能であるのと、光照射がない条件下でも酢酸を基質として増殖させることができると報告。また、暗培養(光照射なし)下でもクロロフィルとアスタキサンチンを合成することを見出している。「酢酸+光」での増殖速度は、「酢酸+光なし」と「酢酸なし+光」の条件下の増殖速度の和であり 5) 、アスタキサンチンの合成は、照射光量に依存し赤色より青色光が効果的であること6)、高い炭素/窒素比で誘導されたシスト化に付随して生成すること 7) などを度明らかにし、アスタキサンチン生合成に活性酸素ストレスの関与が重要としている 8) 。30℃の高温培養の方が20℃培養よりアスタキサンチンの生産性が高い 9) 。カロテノイド生合成阻害剤処理や変異誘導剤処理と、イソプレノイド生合成経路で阻害作用を示すコンパクチン処理などでアスタキサンチン高産生株取得のスクリーニングもなされた 10) 11) 。培養方法の比較で、流加培養のアスタキサンチンの生成量は64.34mg/Lで、バッチ培養(アスタキサンチン53.43 mg/ L)より約20%多かった 12) 。J. Fabregasら 13) はH. pluvialisの培養を検討し、次のような培養培地組成を提出している; KNO3:0.41,Na2HPO4:0.03,MgSO4・7H2O:0.246,CaCl2・2H2O:0.11mg/L, Fe(III)citrate・2H2O:2.62,CoCl2・6H2O:0.011, CuSO4・5H2O:0.012,Cr2O3:0.075,MnCl2・4H2:0.98,Na2MoO4・2H2O:0.12,SeO2:0.0.005μg/L,biotin:25,thiamine:17.5,VB12:15,vanadium,iodine,boron,zinc。 培養は彼らの報告している二段培養法 14) 。一段目(green vegetative cells stage)は培地交換法で、20%/日交換で最大細胞生産性64 x 106/L /日を得た。二段目は光照射(240μmol-光子/m2・秒)培養で、15日間バッチ培養した。この段階での細胞密度の減少は認められなかった。アスタキサンチン生産量は、12日目で5.8mg/L、15日目で9.6mg/Lであった。二段目の段階でcyst化及びアスタキサンチン蓄積が誘導された。誘導の間でも細胞密度は低下しなかった。一段目の培養では、増殖が続き培地内全窒素消費終了までアスタキサンチンを蓄積しなかった。アスタキサンチン最終濃度は、増殖速度と逆相関性を示した。
  H.pluvialisの培養には、大きな浅い池で行う方法も用いられるが、開放の設備のため微生物汚染や鳥類のフン、ゴミの混入など問題が多く、高品質アスタキサンチンの製造には適していない。しかし、設備が安価なため用いられる場合もあるが、品質のよいものを製造するために培養装置の開発も検討されている。光の利用度を高めるため細長いガラス管(52m× 口径1cm)をループ状にした装置 14) が試みられ、産生する菌体量は最高20g(乾燥重量)/Lにまでなったが、生産には8g(乾燥重量)/Lで運転すると云う。半球形のドームを隙間を開けて二個重ねたようなバイオドーム 16) が開発され実用化されている。この装置は、球形のため日中の光の利用が、平面の培養池法などに比べて効率的あることを特徴としている。産生する培地容積当りの菌体量も多く、また生物学的に状態の均一な菌体を得やすくこれから抽出されるアスタキサンチンも品質の良いものが得られる。





P. rhodozyma からアスタキサンチンを抽出する方法を検討した 1) 。 細菌Bacillus circulans WL-12の菌体外酵素で酵母の細胞壁を一部分解してからアセトンやエタノールなどの溶媒で抽出する。26時間処理するとよく抽出された。加水分解酵素は、β-(1,3)-グルカナーゼ、β-(1,6)-グルカナーゼ、α-(1,3)- グルカナーゼ、キシラナーゼ、キチナーゼなどであった。pH 6.5で作用した。P. rhodozyma は強い光照射およびアンチマイシン(antimycin)の影響を受け 2) 生育が抑制されカロテノイド合成も低下する。光によりカロテノイドの組成も変化し、β-ゼアカロテンが増加し、β-カロテンやアスタキサンチン、フェニコキサンチン、3-ハイドロキシ-3’,4’-ジデハイドロ-β,ψ-カロテン-4-オン(HDCO)を含むキサントフィルが減少した。野生株ではアンチマイシンによる生育阻害は光で回復した。この活性の強い株が高カロテノイド産生株の可能性がある。β-ヨノンがアスタキサンチンの合成を阻害するが、β-ヨノン含有培地でスクリーニングして高産生株を選別できた 3) 。フローサイトメトリー(FCCS)を利用したアスタキサンチン高産生株の選別方法 4) を確立。NTG(N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine) 処理でアスタキサンチン高産生株をスク−ニング 5) 。親株はアスタキサンチン含量が565.08 μg/g 酵母であったのに、変異株の一つは1515.63 μg/g 酵母と高生産性を示した。高グルコースと酵母抽出物の組み合わせで8637.5 μg/Lの生産があった。甜菜加水分解物を培地とした培養 7) で、最適培養条件を開発した理論を基に検討し希釈速度 0.017/h、pH 7.19でアスタキサンチンを544 mg /kg 乾燥酵母重量を産生した 6) 。ユーカリの木材を酸加水分解し活性炭処理等で倍地化し、アスタキサンチン発酵に使用。濃縮したキシロース16.6 and 40.8 g/L培地で酵母濃度23.2 g /L、 12.9 mg 総カロテノイド/L、10.4 mg アスタキサンチン/Lの生産であった。窒素とリンについて検討 8) 。NH3を61mMから12.9mMへ減少させると細胞内アスタキサンチンが最終140μg/gから230μg/g、1.2μg/mLから2.3μg/mLへと上昇した。同じようにリンを4.8mMから0.65mMへと減少させると160μg/gから215μg/g、1.7μg/mlから2.4μg/mlへと上昇した。酵母からの抽出法 9) 。ココナッツ工業で排出されるココナッツミルクを培地に使用してアスタキサンチンの生産性が向上した 10) 。0.2 MHCl, 9 時間, 90 ℃ 処理後、pH3に中和して乾燥するとアセトンでアスタキサンチンが100%抽出された。カビの一種Epicoccum nigrumの培養液を酵母の培地に加えるとアスタキサンチンの生産が多くなる。本来アスタキサンチンを産生しない株でも産生するようになった 11) 。P. rhodozyma を用いたアスタキサンチン工業的生産について現状に関するE.A. Johnson 12) の総説がある。



オキアミ1)にアスタキサンチンが含まれている。H. pluvialisのアスタキサンチンが供給される以前のアスタキサンチンの主要な供給源であった。オキアミからのアスタキサンチンの製造2)は、オキアミをプロテアーゼ処理し、オキアミエキス調製時のろ過残渣(主に殻からなる)を乾燥、粉砕後アセトン抽出し、抽出液をシリカゲルカラムのHPLC(溶出:n-ヘキサン・n-ヘキサン+アセトン0.1〜20%)にてアスタキサンチン区分を分取。アスタキサンチン5%含有物を得る。分子蒸留法3)を組み合わせて臭いの少ない製品も製造できる。


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