天然アスタキサンチン   天然アスタキサンチン
アスタキサンチンの抗酸化作用

トップページ > アスタキサンチンの抗酸化作用 > 一重項酸素 - スーパーオキサイド- 過酸化水素 - ヒドロキシラジカル - 脂質過酸化 

トップページ
アスタキサンチンの概要
アスタキサンチンの化学
アスタキサンチンの製法
アスタキサンチンの抗酸化作用
一重項酸素
スーパーオキサイド
過酸化水素
ヒドロキシラジカル
脂質過酸化
生理活性
アスタキサンチンの代謝
安全性
作業への利用
特許その他
関連文献・研究

一重項酸素

一重項酸素(1O2)は、基底状態の三重項酸素(普通の酸素)よりエネルギーが高い状態の酸素である。三重項酸素が光のエネルギーにより励起されて生成するため反応性が高く、生物体内で発生した場合は蛋白、脂質、DNAなどと反応して障害を起こすことが知られている。一重項酸素を消去する物質には、トコフェロール(VE)やカロテノイドが知られているが、カロテノイドの一種であるアスタキサンチンが強力名消去作用を示すことが知られている。特に細胞膜など脂質中の一重項酸素消去に重要である。水相ではアスコルビン酸が消去能力を発揮する。

一重項酸素を消去する生物由来の抗酸化物質の消去能を3,3’-(1,4-ナフチリデン)ジプロピオネート(NDPO2)を用いた一重項酸素発生系で測定した結果、リコペンが最も効果的に1O2を消去した。トコフェロールとチオールは劣っていた。強さの順序は、リコペン、γ-カロテン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、α-カロテン、β-カロテン、ビキシン、ゼアキサンチン、ルテイン、ビリルビン、ビリベルジン、トコフェロール類、チオールであった。しかし、生体組織では異なる可能性がある1)。また、他の測定系の一つヘキサン/エタノール溶媒系でリノール酸のメチレンブルー光増感酸化を測定する簡易法でニンジンのβ-カロチン、酵母(Phaffia rhodozyma)の遊離アスタキサンチン、緑藻のアスタキサンチンのモノ及びジエステルの一重項酸素消失活性を比較したところ、脂質酸化の50%阻害濃度(小さい値ほど強い)は、100%エタノール溶液中でβ-カロチン:遊離アスタキサンチン:そのモノエステル体:そのジエステル体=40:8:9:10μMであった。50%(v/v)ヘキサン添加エタノール溶液中では14:16:10:7μMであった。アスタキサンチンはβ-カロチンより抗酸化力は強いが値は環境によって変化することが示されている 2) 。さらに、カロテノイドを発現する遺伝子操作大腸菌を用いて、培地中に一重項酸素発生系を入れてその消去力を測定すると、ゼアキサンチンとアスタキサンチンが同程度で最も強力であった。K(q)値がβ-カロテンより3.5倍大きかった。生体でもアスタキサンチンは強力に一重項酸素を消去することが示された 3)




スーパーオキサイド
スーパーオキサイド(O2-)は、通常の酸素に電子が1個取り込まれた形の酸素でアニオンとしての性質も持っている。生体内では虚血、炎症、放射線照射などの場合に生じ、生体内の活性酸素の中ではエネルギー的に最も高い状態の酸素である。しかし、それ自体の反応性は比較的低いと言われているが、遷移金属(Fe3+、Cu2+など)と共にヒドロキシラジカル(HO・)を生じ、これが生体内で有害な反応をすることで重要視されている。生体内では、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)と呼ばれる酵素がこれを消去する働きを担っている。

2O2-+2H+ → H2O2+O2

スーパーオキサイド(O2・-)を消去する低分子物質としては、アスコルビン酸が存在するが水溶性の物質であるため水相中のスーパーオキサイドの消去に役立っている。生体内では、アスタキサンチンはこの活性酸素種の消去に寄与することは少ないかもしれない。




過酸化水素

過酸化水素(H2O2)は、生物が生命活動をしている(種々の生化学反応)時に発生している活性酸素であり、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)によるスーパーオキサイド(O2・-)消去時や、キサンチンオキシダーゼなどのオキシダーゼの酵素反応などから生成する。過酸化水素は、生体内で生理的pHでは他の活性酸素種に比べて安定であるため生体膜を通過することができる。しかし、遷移金属(Fe3+、Cu2+など)が存在すると毒性の強いヒドロキシラジカル(HO・)を生ずる。体内では過酸化水素はカタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼにより分解され、酵素処理による消去が主な経路と考えられる。

2H2O2 → 2H2O+O2

 最近の研究では、過酸化水素は生体内で情報伝達に関与しているとする知見も多くなされておりわれわれの生命に重要な働きをしている可能性がある。




ヒドロキシラジカル

ヒドロキシラジカル(HO・)は、活性酸素種の中で最も反応性に富むものである。(HO・)は電子を受け取ってOH-になりやすい(還元されやすい)ので、求電子的な性質を持つ強い酸化剤である。反応性が高いのですぐに反応してしまい遠くまで拡散するほど寿命はなく、ある特定な化合物の特定位置を選択的に酸化するということはなく、無差別な酸化を行う。(HO・)の発生は、水のγ線照射、過酸化水素のレドックス分解や光分解などで見られる。生体内では細胞障害を与える主な要因と考えられている。即ち、たんぱく質(筋肉成分、酵素など)、核酸(遺伝に関連するDNA、RNA)、脂質(脂肪、細胞膜の構成成分)、糖質(炭水化物、糖たんぱく質など)と反応して細胞障害を生ずる。反応性が高いため特異的な消去剤(抗酸化剤)は見出されていない。生体系ではヒドロキシラジカルは、水に溶解しやすいのでアスコルビン酸により速やかに消去されると考えられる。その他L-システイン、L-メチオニン、グルタチオンなどとの反応性も高く消去に関与している可能性がある。




脂質過酸化
過酸化脂質の生成は、食品化学分野で油の品質低下の問題として研究されてきた。生体内でも脂質を構成成分とする細胞膜をはじめ脂質二重膜における活性酸素による過酸化脂質生成が生理活性に大きな影響を与える。老化などとの関連から重要視されるようになってきている。また、過酸化脂質は生理活性を持つプロスタグランジンの生合成などにおいても重要な反応であり、生理活性と密接な関係があることが明らかになってきた。共役二重結合を持つ脂質の過酸化は、連鎖反応にて進行し脂質ヒドロパーオキシド(LOOH)が多量に蓄積するため抗酸化剤による脂質の過酸化抑制は重要である。

 溶液中でメチルリノレイン酸の酸化抑制力を測定(反応生成物ハイドロキシメチルリノレイン酸)する系で、β- ヨノン環の4、4’位にオキソ基を持つカンタキサンチンやアスタキサンチンは、それを持たないβ-カロテンやゼアキサンチンよりハイドロパーオキシドの生成を遅延させた。カンタキサンチンやアスタキサンチンの自己触媒的酸化速度は、β-カロテンやゼアキサンチンのそれより遅い。カンタキサンチンやアスタキサンチンは抗酸化に効果的である 1) 。また、ヘム鉄とリノール酸を用いたフリーラジカル連鎖反応系での脂質過酸化に対するアスタキサンチンのクエンチャー活性(失活剤活性)は、他のカロテノイドと比較してアスタキサンチン 2) が最も強い活性を示した。生体系のモデルとして、ラット肝ミクロソームの空気存在下におけるラヂカルによる脂質過酸化を行わせる系では、アスタキサンチンやカンタキサンチンの様な共役ケトカロテノイドはα-トコフェロールと同じように脂質過酸化反応を阻害した。β-カロテンは効果が小さかった3)。生体の脂質二重膜のモデルのフォスファチジルコリン(PC)リポソームを用い、ラジカル生成物による脂質過酸化連鎖反応系を作り、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、アスタキサンチンを添加すると、これらの化合物はPC過酸化脂質 (PC-OOH) を生成して連鎖反応を中断した。アスタキサンチンを含むキサントフィル類が、過酸化ラジカルの攻撃から脂質の過酸化を防御し、膜リン脂質の過酸化連鎖反応を阻止する抗酸化物として働くことを示唆していた 4)

非均一系(脂質/水)の中で水系フリーラジカル発生物源としてメトミオグロビンと均一系(クロロホルム)の中でフリーラジカル発生物源としてアゾ-bis-イソブチロニトリルをそれぞれ用いた不飽和脂肪酸過酸化におけるカロテノイドのフリーラジカル除去を検討したところ、アスタキサンチン、β-カロテン、カンタキサンチン、ゼアキサンチンが抗過酸化を示し、カロテノイド類の濃度上昇と酸素分圧減少で抗過酸化力は上昇した。均一系での安定性は、アスタキサンチン> カンタキサンチン>β-カロテン> ゼアキサンチンの順で、リノレン酸の過酸化抑制力も安定性の順に対応していた 5) 。海産微生物の典型的なカロテノイド、アスタキサンチンとペリジニンやリコペンは、PCリポソームに取り込まれ脂質過酸化を阻害するが、脂質過酸化プロモータ-H2O2、t-ButOOH、VC-Fe(2+)-EDTAによる脂質破壊をアスタキサンチンの方がペリジニンよりも強く抑制した。アスタキサンチンの抗酸化作用は、膜の強化と本来の抗酸化力によると考えられる 6) 。脂質二重膜での活性を見るため、ADPとFe(2+)で誘導されるリポソ-ムの過酸化に対するβ-カロテンとアスタキサンチンの効果を比較すると、アスタキサンチンがβ-カロテンの2倍強く脂質過酸化物の生成を抑制した。膜中および膜表面と膜中の両方で、共役ポリエンと反応性の強い構造を両端に持つアスタキサンチンのラジカル捕捉性によることが示唆された 7) 。同様にジパルミチルフォスファチジルコリン(DPPC) の転移状態が、アスタキサンチンを少量加えることで著しく変化した(液晶状態の転移)。アスタキサンチンの膜内での分子配列がラジカル消去により適した状態であることを示唆している 8)


アスタキサンチンの抗酸化作用トップへ

一重項酸素に関する文献 - 脂質過酸化に関する文献


Copyright©2008 The Astaxanthin Manufactures’ Association. All Rights Reserved.